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''三浦綾子 小説『銃口』を読む''

三浦綾子 小説『銃口』を読む

 このレポートは、2014(平成26)年10月18日(土)に、月に1回、豊島区で行われている勉強会で、「ひとり一発言」の資料としてまとめたものを、手直ししたものである。

◆三浦綾子 小説『銃口』を読む

 6月25日(水)、友人のN氏から分厚い封筒が届いた。中には、6月22日(日)に行われた佐竹 直子さんの講演の資料『生活綴方弾圧事件を追って~戦時下の北海道綴方事件(1940~41)その実像と今日的意味~』が入っていた。
 北海道生まれなのに、私はこの事件について全く知らなかった。資料を読んでいくと、三浦綾子の小説『銃口』のことが取り上げられており、『銃口』が「北海道綴方教育連盟事件」を題材にしたものであるということが分かり、ぜひ読んでみたいと思った。
 図書館で3回も借り直しをして読んだにしては簡単な感想なのだが、要点をまとめてみた。

◆読み始めてのもろもろの感想
1.「単行本あとがき」によれば、「小説『銃口』は、小学館「本の窓」誌1990年1月号から1993年8月号まで37回に亘って連載された。」とある。
 1990(平成2)年 三浦綾子 68歳、1993(平成5)年 71歳である。『銃口』の中で、「北海道綴方教育連盟事件」が題材として取り上げられたことにより、この事件は日本全国、広く知られていくことになるのだが、それにしても、この年齢(書き始めが68歳、連載の最後では三浦綾子は71歳)、これを見て頭が下がってしまった。

2.主人公 北本竜太。小学3年生。旭川の「5本の指に入る」質屋の息子(長男)。2年生の弟、6年生の姉、父親 成太郎、母 キクエ。個性的で、とても素敵な家族(構成)として描かれていて面白い。

3.時代は、大正天皇の大葬の礼が行われた1926(大正15、昭和元)年でスタートしている。

4.3年2組の級長 竜太は「ご大喪の日のこと」という作文を読まされて、担任の「河地三造」に往復ビンタを食らう。綴方が大嫌いになるのだが。

5.四年生(4年2組)で「坂部久哉(ひさや)」先生が担任となる。この先生が、竜太の生涯に影響を残す、大切な存在となっていく。

6.この先生の授業中の話を、一部紹介。
・<宿題を忘れるより、零点を取るより、ずっと悪いのは弱い者いじめだ。これだけは、絶対許さん!>
・ <先生はあまり宿題を出さんぞ。出すのは君たち自身だ。銘々自分で自分に出すんだ。>

7.始業式の日、炭鉱の街 夕張から転校してきた「中原芳子」が、国語の時間に遅れてやってくる。この子について、詳しい説明、描写が長くあるのだが、まとめきれないし、自分で読んだ方が絶対面白いので、一つのみ紹介してあとはやめておく。
・<地味な花模様の綿入れの袖なしを着た女の子のお下げ髪がかすかに揺れている。女の子は顔を両手で覆ってしゃくり上げていた。
「なあんだ、遅れてきたのか」
誰かが言った。坂部先生は不意に 厳しい顔をして、声のしたほうを見た。>
 この子、芳子も、竜太にとってとても大事な存在となっていく。

8.「奉安殿 第二次大戦前、学校内に天皇、皇后の御真影(写真)と教育勅語を安置するため、校舎と別に設置された神殿形式の建物。」という説明が載っている(「三浦綾子 小説選集8 主婦の友社」)。

絶対にしてはならぬこと、それはお尻を奉安殿に向けてはならないことです。(教頭)>
三年の時の担任の「河地三造」が、竹箒を股にはさんだ4年生の男の子にビンタを食らわす。奉安殿を掃除する竹箒を股にはさむとは何事か、というわけだ。ここで、河地に対して、坂部先生が河地の天皇観を強烈に批判するのだが、ここも面白い。

9.竜太 「中学3年生」の時の出来事。タコ部屋から逃げ出して隠れていた「朝鮮人 金俊明」との出会い。「朝鮮人 金俊明」は、竜太の父 政太郎によって助けられる。
10.「朝鮮人 金俊明」を政太郎が助けたことで、後になって、竜太が大きな恩恵を受けることになるのだが、こうやって書いていると切りがないな。

◆話が進んでいくと
11.綴り方教育連盟事件に巻き込まれて、竜太、坂部等、拷問、厳しい取り調べが 長く続いていく。                           
耐えられないような取り調べの中で、竜太の恩師、坂部は、いつか誰かに聞いたことを思い出す。
<警察は強引に自白させようとすることが多い。まともにつきあっていたら、体がたまらん。事の真実は、検事の取り調べの時に、明らかにしたほうが得策だ。>
(そうだ、検事の取り調べが希望だ)

 竜太に関しても、次のような表現が出てくる。
<竜太は、裁判は公正になされると確信していた。裁判の日が来れば、すべて明らかになる。>

 こういった期待は、すべて失望のもとに打ち砕かれていく。竜太は、退職願を書かされ、教職から退かされてしまう。

*この小説を読みながら、私は、戦前の「警察」と「検察」の関係、戦前の裁判制度をしっかり調べていく必要を感じている。戦後の裁判制度とどう違っていたために、この小説『銃口』に書かれているような、ひどい人権無視の事件が起こっていったのか。そういった点を突き詰めていきたいと思っている。

12.竜太は精神にやや異常をきたした(?)ことにより、7か月間の勾留の後釈放されるが、拷問により体が衰弱して帰されていた恩師の坂部は1か月前に死亡していたことを知らされる。

13.さらには、今回の弾圧が全て秘密裏に処理されていて、世の人々は、70名近い教員たちが、北海道の様々な場所の警察署に長期に勾留されていることすらも知らされていないことが分かってくる。そんな中でも、「思想犯」の竜太のもとには、特高、憲兵が来訪。亮太は、周りの人々から「スパイ」扱いをされていく。

14.召集令状が来て、竜太は満州へ。
「軍隊」、「戦争」の実態をまとめたかったが、まとめきれなかった。

15.敗戦による逃避行、ここにも学ぶべきことが多かったが、割愛。

16.小説『銃口』の題名については、三浦光世氏が、創作秘話(8)の中で、<『銃口』という題名は昭和の一面を象徴していまいか、・・・再び銃口に怯ゆる日のない全き平和を祈るものなり>と、三浦綾子の日記の記述をもとに説明を書いているが、私は、どうもしっくりと納得できない感じをしている。

17.<軍隊の本質><戦争の本質>、さらには、<戦前の日本社会は、どのような社会であったのか、しきたり、裁判制度等>については、別の資料をもとに学習を続けていきたいと思っている。

                       
◆これをUPしたのは、2016年9月9日(金)
 書いたものをしまい込んでおくのは、自分のためにもマイナスだろうと思っている。考え続ける材料としていきたいと思っている。

 

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